■文章編6      ┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓      ┃ ┃      ┃ インタフェース(ハード編) ┃      ┃ ┃      ┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛ ■つなぐ,結ぶ ここでのテーマは,「つなぐ」「結ぶ」です。 コンピュータは,本体だけではたいへん孤独な存在で,CPUが霜柱の独り 言のようにぶつぶつ計算したとしても,それだけではなんとも役に立たない寂 しく情けないシロモノです。そこで,当然ながら,本体にいろいろな周辺機器 をつないだり,ほかのコンピュータと接続したり,といった作業が必要になる わけですが,その接続には,いろいろとハード的な規格やソフト的な約束事が 決められています。 ここではそのあたりを,思いつくまま,いきあたりばったりに考えてみまし ょう。なにしろ「網羅」なんてことはとてもできない,面妖なジャンルです。 TOWNSに関わっていて,ここでは取り上げるつもりのないものだけでも, オーディオLINE IN/OUTに使われているRCAジャック(ピンジャ ック),マイクやヘッドホンをつなぐミニジャック,パッドやマウスをつなぐ アタリ仕様のジョイスティックポート,CRTディスプレイをつなぐアナログ RGBコネクタ,増設フロッピィディスクドライブをつなぐ外部FDDコネク タ,そしてモデムを接続するなら家庭用電話回線に使われるモジュラージャッ ク,などなどなど。このほかにもいったいどのくらいあるか見当がつかないく らいです。 ま,何はともあれ,まずは基本を少々おさらいして,それからメジャーどこ ろをさらりとやってみましょう。 ■インタフェース 「インタフェース」という言葉はかなり抽象的かつ広範な意味に使われる言葉 で,2つ以上のもの,つまり「何かA」と「何かB」のつなぎ目,境界面のこ と・装置・手順・技術・あるいはそれらもろもろの規格,を指します。人がコ ンピュータを使うときの,キーボードや画面構成のあたりのことをユーザーイ ンタフェースだの,マンマシンインタフェース(MMI)だのと表現すること が多くなったため,ますます言葉としてややこしくなってしまいました。 ここではまず,ややハード寄りの接続のお話をするつもりですので,インタ フェースという言葉も,そちら指向で考えてみましょう。 たとえば,パソコンに外付けハードディスクをつなぐとき,パソコン本体と ハードディスクの間をつなぎ,結び合わせる部分が,インタフェースです。実 際には,拡張ボードやカードが必要だったり,ケーブルやコネクタが必要だっ たり,と,どこまでがインタフェースそのものかといえば非常に曖昧な面もあ りますが,「境界面」というくらいですから,そのあたりはしかたないでしょ う(たとえば「水面」に水は含まれるのか,それとも空気は含まれるのか,と いったような感じですね)。 そうそう,これは問題ないと思いますが,パソコンに何か周辺機器を接続す る場合,電気信号の通る線のことをケーブルといい,そのケーブルをつなぐつ なぎ目の部分をコネクタといいます。お手元のパソコンの背中のほうを覗いて みると,台形や四角や丸の形をしたコネクタが並んでいるのがわかりますね。 ■RS-232C アールエスニサンニシー,と読みます。「ニ」は若干「ニー」と伸ばす,か な? そういえば,パソコン界隈では,少しでも長い言葉はすぐ略称が広まるのに, このRS-232Cってせいぜい「RS」とか「232C」とかって呼ばれるくらい で,抜本的かつカッコいい略称というものはありません。もともとが略称みた いな言葉だからではあるのでしょうが,ちょっと不思議な気もしますね(そう いえば,コンピュータグラフィックスは「CG」で通用するのに,コンピュー タミュージックにはいまだに素敵な略語が登場しません。そりゃ,略して「C M」ではあんまりですし・・・・。最近では,デスクトップミュージック,略して DTMという言い方を提唱する向きもあるようですが,はたして定着するでし ょうか)。 さて,話題を戻しましょう。このRS-232Cというのは,パソコンの入出力 インタフェースの代表的なもので,要するにパソコンとパソコンをつなぐため のハード的なお約束の一種です。実際は「Dサブ25ピン」というコネクタの形 状と,電圧の高さとか信号の意味といった規約が決められているだけで,ソフ トについては全くのところプログラマサイドにゆだねられているといってよい でしょう。 RS-232Cが最も日常的に見られるのは,パソコン通信を行う局面で,です。 まず,パソコンにRS-232Cインタフェース部があり(最近は本体に標準で内 蔵されているパソコンがほとんどですが,かつてはRS-232Cインタフェース カード別売のパソコンも少なくありませんでした),そのコネクタにケーブル をつなぎ,ケーブルをモデムに接続,モデムはモジュラーケーブルなどで家庭 用の電話回線に接続され,パソコンで通信ソフトを立ち上げればパソコン通信 ネットワークにアクセスできる,という具合です。 しかし,RS-232Cは別にモデムを介さなければならないものというわけで はなく,メディアの違うパソコン2台をケーブルで直接結んでデータのやり取 りをするということもけっこう行われています。 なお,以下のことは,覚えていなくても何の問題もありませんが,オマケの 知識として付け加えておくと,RS-232CはEIA(米国電子工業学会)が19 81年に承認した規格で,シリアルインタフェース(1本の線を使い電圧のON, OFFで信号を伝える形式のインタフェース。ちなみに反対語はパラレルイン タフェースといい,何本もの信号線に並列でいくつもの信号が伝えられるもの) の一種で,50フィート(約15m)以下の距離内で約20Kbps(=20Kビット/秒) の通信まで可能,とされています。 ■セントロニクス RS-232Cがシリアルインタフェースの代表ならば,パラレルインタフェー スの代表格がこのセントロニクスインタフェースです。・・・・なんていうと, 「えっ,そんなのうちのパソコンに付いてたかしら」とドキドキしちゃいます が,なんのことはない,プリンタを接続するときの事実上の世界標準インタフ ェースがこれなんです。 詳しくいうと,8ビット・パラレル(並列)のデータ信号線と数本の制御信 号線からなり,コネクタは36ピン。パラレルゆえ,シリアルのRS-232Cより 高速にデータ転送ができますが,パラレルゆえ,RS-232Cのような遠方との データのやり取りには向きません(なぜかといえば・・・・平行に信号を送る手前, 距離が長いと,各信号線の信号が同時に到着するとは限らなくなり,制御しき れなくなる可能性があるから,だそうです。ふむふむ)。 で,ともかく日本のパソコンもほとんどがプリンタへの出力はこのセントロ ニクス仕様に準拠していますので,コネクタさえ合えば,どのメーカーのプリ ンタへでも半角アルファベットくらいは出力することができるはず・・・・しかし, 全角の漢字の管理や,グラフィック,多色印刷などの管理方法がプリンタメー カーによってまちまちなのが困ったところです。 なお,セントロニクスという名称は,この規格を開発した,今は亡き(吸収 合併されてしまった),「セントロニクス・データ・コンピュータ社」という アメリカのメーカーの名前から来ています。 ■SASI/SCSI SASIもSCSIも,主にパソコン本体とディスクとをつなぐために開発 されたインタフェース仕様で,SASIのほうは,Shugart Associates Sy stem Interfaceの略で「サシー」と読みます。シュガート社というアメリカ のディスクメーカーが自社ブランドのディスクのために開発した規格で,40M バイトのハードディスク2台までが接続でき,後のSCSIの元になりました。 SCSIは,Small Computer System Interfaceの略。ANSI(米国 規格協会)によってまとめられた,パソコンとハードディスクや光磁気ディス クなど各種の周辺機器をつなぐ汎用インタフェース規格で,「スカジー」と読 みます。SCSIを利用すると,最大8台までのハードディスク(や光磁気デ ィスクやCD-ROMなどの周辺機器)を同時に利用でき,8ビット・パラレ ル伝送によってRS-232Cより格段に高速な通信が可能になっています(同期 モードという速いモードでは最大4Mバイト/秒,ということですから,ええ と,バイト単位だから・・・・RS-232Cの1600倍以上,ということですか。もっ ともこれはどちらも理論値ですから,現実はソフト・ハードの構成次第,です が)。 なお,略す元の言葉から考えると,SCSIインタフェースという言葉はダ ブっていてたいへん恥ずかしいことがわかりますね。 ■MIDI 「MIDI」は,Musical Instrument Digital Interfaceを略した言葉で, 一般に「ミディ」と発音します。 元々は,Roland,ヤマハをはじめとする日本の楽器メーカーが1983年に提 唱し,やがて世界的な標準規格となった,電子楽器を制御するための規格です。 シンセサイザー,リズムボックス,シーケンサ,コンピュータなどを16台ま で相互に結びつけ,コントロールするための規格であり,音の高さや長さとい った楽譜データにあたるものや,楽器を個別にコントロールするための信号 (エクスクルーシブメッセージという)をやり取りします。 なお,データの伝送速度は,31.25Kbps(=31.25Kビット/秒)のシリア ル,ということですから,RS-232Cの約1.5倍程度,それほど高速なインタ フェース規格ではありません。 ■プロトコル プロトコル(protocol)というのは,RS-232Cやセントロニクスのような, ハード的なインタフェースの規格ではありません。データのやり取りや通信を 行う際の,「手順」や「お約束」そのものを示す言葉です。 たとえば,A国とB国の外務大臣同士が会合を行うときに,何日の何時から どこで,という面でのハード的な約束に対し,たとえば会話は英語で行いまし ょうとか,一方が発言している間はもう一方は黙って聞きましょう,とか(当 たり前ですね),そういった個別のお約束がプロトコルです。 実際にパソコンを使う場合だと,たとえばパソコン通信を始める際の,ター ミナルソフト(MOPTERMやWTERMやTownsVNETなど,いわゆる 通信ソフト)の設定の,「通信速度2400bps,MNPクラス5,データ長:8 ビット,ストップビット:1,パリティ:なし・・・・」云々かんぬんというのが, すなわちそれぞれプロトコルです。 また,パソコン通信ネットワーク上からプログラムやデータをダウンロード しようとするとき,ダウンロードする手順に,「X-MODEMやB-Plusな どのプロトコルがある」,という言い方もします。 「bps」に「MNP」に「データ長」に「ストップビット」に「パリティ」に 「X-MODEM」に「B-Plus」と,なんだかややこしい言葉が並びました が,通信ソフトを自分で作ろうとかいう方以外は,これらの言葉の意味や内容 はそんなに気にする必要はありません。 入手したターミナルソフトを立ち上げ,そのプロトコル設定画面でホスト側 のマニュアルに提示されたように指定すれば,また,ターミナルソフト内でダ ウンロード機能を選んだときのソフトからの指示に従えば,通信自体はそんな に難しいことではありませんので,ご安心ください。 えっ,通信について,そのへんの難しい用語は説明しないのか,ですって? そりゃそうです,通信のことは,通信先で聞きましょう。餅は餅屋,通信はネ ットワーカー。きっとその筋の方々が,僕などより遙かに詳しく,わかりやす く解説してくれるに違いありません。だっ(←逃げる音)。